高齢者のQOL(生活の質)を下げないために出来ることとは?

高齢者のQOL(生活の質)を下げないために出来ることとは?

「QOL」という言葉をご存知でしょうか?

「Quality of Life」の略語で、日本語では「生活の質」という意味を持つ言葉です。社会政策、医療、社会心理学、老年学など幅広い分野において用いられています。

生活の質は、自分らしく、人間らしい生活を送ることで、自身の人生に幸福感をどれらけ感じられるか、という尺度を表す際に用いられます。生活の質が高いということは、それだけ生き生きと日々生活していることであり、生活の質が低いということは、それだけ生活において幸福感、満足感を感じられていないことを示すのです。

このQOLですが、21世紀以降は、高齢者福祉、介護の場面でも頻繁に使われるようになってきました。平均寿命が延び、今や世界1、2を表す長寿大国である日本ですが、「生活の質も高まっていると言えるのか」という問いかけが国民の間から生じてきたのです。

以下では、QOLとは何なのか、高齢者とQOLとはどのように関わるのか、そして高齢者がQOLを下げないために何ができるか、について詳しく見ていくことにしましょう。

「QOL」とはどのような概念なのか?

QOLとは?

QOLは、研究者や機関がそれぞれ定義を発表していて、なかなか統一的な定義が打ち出されていないのが現状のようです。研究者のロートン(Lawton)は、生活機能、行為の健全性、主観的健康観、主観的幸福感、居住環境などを指標として挙げています。「主観的」という面が強調され、本人が健康、幸福を自覚しているかどうかが重視されているといえるでしょう。

一方、世界保健機構(WHO)は、身体的健康、心理学的側面、自立の水準、社会的関係、環境、精神性(宗教や信念)といった基準で、QOLを捉えています。こちらはWHOQOLとも呼ばれ、世界的な基準として打ち出さたもの。ただ、これが正しい定義というわけではなく、論者や学者によってさまざまな定義が提示されています。

高齢者のQOLとは?

高齢者のQOLをどのように捉えればよいかについても、さまざまな定説があります。ただ定義としては、1991年の国連総会で採択された「高齢者のための国連原則」が有名です。これは、自立、社会参加、ケア、自己実現、尊厳の5つの指標から成り立つ定義になります。

この5つの項目に関することは、加齢と共に脅かされることになります。年をとれば足腰が弱くなったり、持病を抱えたりもすることはどうしても増えます。

しかしそうした身体的要因だけで生活の質が下がるわけではありません。

高齢者を取り巻く環境、さまざまな精神的負担が、QOLを低下させる要因となります。ではいったいどのような事柄が、高齢者のQOLを低下させるのでしょうか。

高齢者のQOLを下げるものとは?

高齢者の抱えるストレスがQOLを下げる

高齢者が生活の質を下げる要因の一つは、加齢によるもの。加齢と共に関節が痛くなる、病気を抱える、認知症を発症するなどさまざまな要因で、先に挙げた国連の5つの指標、「自立、社会参加、ケア、自己実現、尊厳」に関わる問題を抱えることになります。

ただ北海道浅井学園大学の「北方圏生活福祉研究所」の研究によると、高齢者のQOLを低下させる要因として、加齢によるもの、病気によるもの以外に、「生活していくこと、生きていくことに対する不安」、「対人関係における不安」が大きく関わるのだそうです。

生活していくこと、対人関係における不安

生活していくこと、生きていくことに対しては、家計に対する不安、生活上において相談相手がいないことに対する不安などがあると言います。

近年、格差社会とよく言われるようになっていますが、それは高齢者においても同じこと。平成28年版高齢社会白書によれば、世帯主が65歳以上の世帯で貯蓄が4,000万円以上ある世帯が全体の18.3%を占める一方で、貯蓄500万円以下のの世帯も20%近くいます。経済的格差は高齢者世代にも容赦なく到来しているのが現状と言えるでしょう。

経済的に余裕のある世帯であれば問題ないですが、そうではない世帯にとっては、生活に対する不安のストレスはどうしても降りかかります。そのストレスそのものがQOLを低下させるわけです。

また人との関係におけるストレスについては、家族との関係、友人との関係の悪化などもあるでしょうが、特に高齢者の場合、人とのつながりが無いこと、孤独感や社会的孤立感を強く感じることによるストレスも大きいようです。一人暮らしの高齢者が増えているという日本社会の現状が背景にあります。

高齢者のQOLを維持、向上するには

身体的な衰えに備える

加齢と共に体はどうしても衰えてきますが、要介護状態になるのをできるだけ防ぎ、健康な心身状態を維持することは、高齢者のQOLの維持にとってやはり重要

要介護状態になると行動範囲はどうしても狭まり、外出の機会も少なくなりがちになります。元気なうちから介護予防にしっかりと取り組むことが、大きなポイントになると言えるでしょう。

そうした場の一つとして、自治体などで行われている介護予防教室があります。

昨年4月から全国の自治体で「介護予防・日常生活支援総合事業」が始まり、各自治体で独自色の強いさまざまな介護予防事業が取り組まれています。中にはカラオケ業者と提携して、「カラオケを使った介護予防事業」などを展開している自治体もあるほどです。そうした場に参加して、楽しみながら介護予防に取り組むと、健康維持に役立つはずです。

また最近は、介護予防に取り組む「自主グループ」の結成が全国的に行われ、近所の高齢者同士が集まって、介護予防運動に取り組んでいます。こうした場も、人との関係を構築する良い場になるでしょう。

経済面の不安、社会的な孤立を避けるために

経済的な面に対しては、もし年金額だけでは生活が心もとないという場合、利用すべきなのが生活保護。年金を受け取っていても、生活保護が定める生活保護基準額に収入が達していない場合は、生活保護を受け取ることができます。

生活保護と言うと、不正受給の問題などが取りざたされていますが、2017年時点において受給者の49.6%が高齢者世帯。全国で80万6,606世帯が受給しています。「生活保護はちょっと」という価値観が日本人の中に少なからずあるようですが、高齢者のセーフティネットとして機能しているのは間違いないと言えるでしょう。

どうやって生活保護を受ければよいのか分からないという場合は、最寄りの地域包括支援センターに相談してみましょう。地域包括支援センターは、自治体内に住む高齢者支援の総合窓口。然るべきサポートを受けられます。

対人関係や生活上のストレスという点では、地域社会との関わり合いが一つポイントになりそうです。

たとえ一人暮らしであっても、老人クラブなど高齢者が集まる場に顔を出しておくことによって、新たな友人関係や話し相手を作ることができます。また民生委員など地域を支える公的な相談員もいるので、何か問題、不安がある場合は、積極的に相談、活用するとよいでしょう。

地域の中には、人とのつながりのきっかけになる「資源」がたくさんあるので、社会的な孤立を防ぐためにどんどん利用していくことをお勧めします。

まとめ

生活の質・QOLは、論者によってさまざまな定義がありますが、高齢者のQOLということで絞って言えば、国連では自立、社会参加、ケア、自己実現、尊厳といったことが大きく関わっているとされます。

生活の質を下げる「ストレス」を避けるためには、介護予防への取り組み、セーフティネットの活用、地域社会とのつながりの維持がなど大切。地域包括支援センターをはじめ、相談できる機関もいろいろあるので活用してみてください。

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